ゴーストスイーパーとは、人に仇為す霊や魔族から人々を守る気高い職業である。
今、俺はそのGSの下で働いている。いわゆる、アシスタントってヤツだ。
なぜ、何の能力も持たない俺がそんな危険な仕事をしているのか―――
それは未知への探究心――――などではなく、ひとえにこの事務所の主、『美神令子』さんがとてつもない美人だから・・・だったりする。
・・・・・・・・・それにしても、だ。
その当人が一向に姿を見せない。
なんとゆーか、美神さんの肢体を拝めないのでは、来た甲斐がないというものではないか。
そもそも、時給250円というふざけた給料でココにいるのも、美神さんのナイスバディを近くで見るため・・・みたいなもんだしな。

「横島さ〜ん。美神さんから電話ですよ!」

そうだった。俺の名前は『横島忠夫』。現在高校に通う傍らこのようにバイトをしている。
そして、この巫女少女の幽霊は『おキヌちゃん』。
ストレートで艶やかな長髪がポイント高い。清純なところもグーだ。可愛らしい顔と、それに見合った性格がもう・・・。
・・・・そう言う事じゃなく・・。
300年前、地脈の流れを封じるために人身御供されて、現在に至る。
今は、自分を御祓いしてもらうために、美神さんの下で働いている。
自分を祓ってもらうための資金を稼ぐっていうのもなんかおかしいけど・・・、その幽霊を時給30円で雇う美神さんも相当におかしい。

「横島さんってば!!」

おキヌちゃんの再度の呼びかけ。
そうだった。美神さんから電話。時給の理不尽さ(!?)を嘆いている場合じゃない。

「わかった。今行くよ。」

とりあえず、オフィスへ。・・・・・おっと、毛布はカタしておこう。
応接室で昼寝していた事がバレたら、あの女は何してくるかわからん。





「風邪!?・・・・美神さんが?え・・・・ドッキリじゃなくて?」

『っさいわね。私だって風邪くらいひくわよ!』

明日は雪か?
まぁ、美神さんが来れない以上今日は仕事にはならないな。

「んじゃあ、俺も帰っていいんスか?」

『いいわよ。・・・・・あ、その前に注文しておいた道具が今日届くのよ。店まで行って、受け取ってきて頂戴。・・・場所は・・・・・・・。』


どっちにしろ暇だったし、学校にも間に合わないからいいんだけどな。








GS〜彼の追った夕陽〜
第1話 サイキック・パワー!?






「呪的アイテム専門店『厄珍堂』・・・・。この辺だって言ってたけど・・・・・。」

簡単な地図を見ながら、見慣れない街をきょろきょろと見回す。

「あ、あれじゃないですか?」

おキヌちゃんが指差しているのは俺が向いているほうとほぼ反対方向。・・・・・この地図ダメだな・・・・。
その建物は、周りの建物とは雰囲気の違う、和風の屋敷だ。・・・・確かに『厄珍堂』と書いてある。
入るか・・・・。

「ちィース。」

「おおっ!!」

おキヌちゃんと俺が中に入った瞬間、興奮したような声が聞こえてくる。
何があったんだ?
中では小柄なおっさんが、パイプをふかしながらテレビを見ている。

《恐がる事ないのよ〜。タカシ君。さ、ブラをはずしてちょうだい。》

これは!まさか漢の浪漫でわ!?
《先生・・・・・でも僕・・・・・・。》

「ええい、何言うてるか!?一気に行くよろし!!」

サングラスに、のばされた髭がなんとも怪しいおっさんが憤激する。
うむ!真に持って同意見だ!!

《だめだ・・・・僕やっぱりできません!!》

《タカシ君!?》

何ィ!?ふざけるな!!その後、俺達の気分をよそに無情にも画面に表示された文字・・・・・・。

《つづく》

「なめとんのか、コラー!!」

椅子に座っていたおっさんがバットでテレビを叩き潰す。
――あんたやりすぎ。
しかし・・・・。

「てめぇ、それでも男かー!!」

同意見だ。

「「シナリオ書いた奴でてこーい!!!!!」」

最後の文句が計らずともハモってしまった。

「・・・・。いつの間に入ってきたね!?この厄珍に気配をさとらせないとはタダ者でないね!!」

「おっさん、おっさん。」

猛り狂うおっさんに事情を説明する。
どうやら、このおっさんは厄珍堂の店主みたいだ。
それにしても、意外と店内は綺麗だ。古い造りではあるが、掃除は行き届いている。

「なんだ、美神ちゃん来ないあるか?」

「えぇ、まぁ。」

俺も未だに信じられんしな。

「何で来ないか!?今日はどんな服か!?相変わらずええ乳とケツしてるか!?」

おキヌちゃんも思わず苦笑いしている。
俺としては、このおっさんに親近感が沸いたが・・。

「なんか、あんたと他人って気がしないな。」

「ワタシもね・・・。」

そういいつつカウンターの下から、風呂敷包みを取り出す。

「これ、注文の吸魔護符と霊体ボウガンの矢あるよ。全部で十億以上するから、落とすよくない。」

「じゅ、十億・・・・!!」

なら、そんな無造作に扱わずにもう少し丁寧に・・・・。

「ところでボウズ。・・・・いい物欲しくないか?ワタシ、魔道の世界広く通じてるね。いろんなルートで超強力なアイテムを入手する。」

パイプをふかしつつ、すらすらと並べ立てるおっさん。
胡散臭すぎだよ。おっさん。

「で、いいものってなんスか!?」

でも、期待してしまう俺。

「普通、これ数千万円以上するね。・・・しかしまーワタシとボウズ趣味合うし、お近づきに少し分けてあげてもいいよ。どんなバカにもサイキックパワーが宿るという薬。裏ルートでもめったに手に入らない貴重品ね!これを飲めば、ボウズでもエスパーになれるね。」

「うさんくさいなー。」

厄珍が差し出した風邪薬のような紙箱にはカタストロフ-Aとか書いてあるんだが。
いや、マジで。副作用とかあったら洒落にならんし。

「私この道のプロよ!信用するよろし!」

「しかしこんなの一粒で・・・・・。」

「一粒が嫌なら全部飲むよろし!!さっさと飲み込むね!!!!」

は、速い!?凄まじい速度で開封、息も吐かせぬ動きで全てのカプセルをプチプチ押し出し、俺の口に叩き込む。
しまった、ポカーンとしとらんと口閉じときゃよかったんやないか!?
飲み込んだ瞬間、力がみなぎるのを感じた。
強い高揚感。今の俺は何でも出来る。そんな気がしてくる。

ドクン・・・。ドクン・・・・。ドクン・・・・・・。

一転、頭が痛い・・・・。気が違いそうだ。頭の中を何かが蠢いていく感じ。無理やり何かをこじ開けていく。
痛い・・・・・。あまりにも痛い・・・・・・・・・・・・。何かを叩きつける感じ・・・。強くイメージする。
頭が痛い・・・・・・・・『割れそうだ。』
ああ、止まらない・・・・・・・・・。
頭が痛い・・・・。意識がぼやける。

「天井が!!!!」

「な・・・・なにあるか!?こんなにも強力な効果は無いはずよ!」

・・・そんな、あやしいものを・・・のませるな・・・・・・。













目が覚める。病院か?
少し頭が痛む。

「何・・・・・?」

集中すると・・・、頭痛がする。
あの感覚が戻ってくる。・・・・もう、効果は切れているはずなのに・・・・・・・。
そんな感じがする。いや、脳がこの感覚を『知って』いる。
あの薬のせいで、何かが引き出されたのだろう。
しかし・・・・・・・。これは美神さんには黙っていた方がいいな。どうせこき使われるのが落ちだからな。

ガチャリ。

思考を中断させるような音と共に、扉を開けて入ってきたのは美神さん。
相変わらず素晴らしい肉体美♪ないすぼでー!!
いくっきゃない!!

「美神さぁ〜ん!!!俺が心配で来てくれたんスね!!!!!」

ベッドから背筋の力だけで浮き上がり、その後空中制動。そして壁を蹴っていざ美神さんへ。

「俺のアクロバティックな動きに美神さんもメロメロっすね!?」

「気色悪いだけじゃい!!」

拳骨で叩き落される。しかもその後足蹴にまでされる。
いま、俺は入院患者なのに・・・・・・・。
あ、黒・・・・・・・。

「見るな!」

ガス!!

酷ぇ・・・・・・・。



ともあれ、俺はこんな生活を送っているのだ。

続く。
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