そして、夜明けを待っての反撃が始まった。陽動部隊と潜入部隊に分かれて無防備な親玉を叩くという、実にシンプルな作戦だ。
だが、戦力を正確に二分する場合、どちらが陽動でどちらが潜入となってもさして問題はない。
対する戦力が多いほうが逃げ回り、少ないほうが突撃潜入することになる。
相手も正確に二分しているならば本来のまま総力戦となるが、陽動部隊の名を冠する側が陽動のために破壊工作をすることで、相手に揺さぶりをかける。
どう判断するかにもよるがその状況になれば城の守りを固めるか、破壊工作が行われた現場に打って出るかの二択を迫られることになる。
城の守りが固まっていた場合は潜入部隊が派手に暴れまわることで囮としての役割を果たすことになり、陽動部隊が潜入部隊に変わるワケだ。
古き血の吸血鬼、ブラドーは恐るべき敵だが、配下の吸血鬼はそこまで強力というわけでもなく、昼に耐性がない。
ヴァンパイアハーフは昼に耐性を持っているだろうが少数ならば十分に出し抜ける。
私とピートに美神君、そして飛鳥君は潜入部隊。残った冥子君やエミ君をはじめとしたメンバーは陽動部隊になっている。
潜入部隊は器用に立ち回れるメンバー、陽動部隊は大勢を相手に力を発揮できるメンバーを中心にしており、陽動部隊が破壊活動をしながら正面から揺さぶりをかけていく手はずになっている。
相手の反応しだいでは我々が陽動部隊として立ち回り、彼らのフォローに徹することになる。その為に器用に立ち回れるメンバーがこちらのメインになっている。
エミ君は対多数の能力であるし、陽動部隊側にも司令塔となる存在は必須だということで陽動側に編入されている。
我々潜入部隊の現在地は地下通路の中だ。この島は吸血鬼が住み着く以前、海賊の根城でもあったようだ。
海賊たちは何を考えてこの通路を作ったのか今では知る由もないが、おそらくは軍に対する備えだったのではないだろうか。
岩の壁に手をついて慎重に歩きつつ、耳を澄ます。

「横島クン達・・・うまくやっているかしら・・・・。」

美神君の呟きは我々全員の懸念を表したものだった。
僕がその呟きに答えようとしたそのとき、暗い地下通路の中を音を立てずに進んでいく我々の耳に、陽動部隊の起こしたものと思われる轟音が聞こえた。








GS〜彼の追った夕陽〜
第10話 極楽愚連隊、決戦






私たちの仕事は単純かつ危険という、非常に解りやすい正面突破のようなもの。
ようなもの、というのは実際には敵を惹きつける囮の意味合いが強いから。
令子においしいところを持っていかれるのは気に食わないし、ピートとは離れるし、冥子のお守りもしなきゃならないしでウンザリしているワケ。
それでもこうしているのは部隊編成が非常に適切な編成だと納得してしまったからなわけよね。
式神を持つ冥子は派手に正面突破するには最適だし、アンドロイドのマリアも多対一で戦える武装を多数装備してる。
妖狐のタマモの幻術や、私の呪いと霊体撃滅波も大勢を一網打尽にできる可能性を秘めているわけだからこれはもう適材適所と割り切るしかないわけ。
・・・カオスと横島については、なんていうかおまけみたいなものだ。
カオスはマリアのおまけみたいなものだし、時々役に立つことを教えてくれるときもあるわけ。
横島はかなり戦えるようになってはいたけど、知識はないし、器用に立ち回れるのは令子譲りだけど、すぐに騒ぐし・・・潜入部隊的にはおミソだったわけよね。
でもこっちで前衛として戦ってもらう分には、十分実力はあるわね。
助手としては破格の戦闘力といっていいほど。既に下手なGSよりも強いかもしれないわけ。


よく見れば横島に注意を引かれた吸血鬼は悉くと言っていいほど、暴れまわる式神の餌食になっている。
情けない姿はあいつらを騙すための手段ってワケね。そうやってひきつけた吸血鬼をコントロールが甘くて大雑把に暴れてるだけの式神にぶち当てる、か。
令子のとこで働いてただけあってズル賢いわね。逃げる姿が自然なのは半分くらい素が混じってるに違いないわけ。
―――儀式は終了。一網打尽にしてやるわ。

「霊体撃滅波!!!!」

霊体を著しく消耗する程度に抑えた霊体撃滅波が吸血鬼たちをまとめて行動不能に陥らせる。
タマモの幻術が切れるのも予想の範囲内、妖気まで散らしてしまうのは想定のうち。
残る吸血鬼たちが少なくなるや否や横島は逃げ回るのをやめ、攻撃をかいくぐって残った一団に躍りかかった。

「うわちっ、あぶねーな!悪いけど痛い思いしてもらうぞ!!俺達が痛いのはもっと嫌だからなっ!!!」

先程までとは一転し、手馴れていると言ってもいいほど自然に吸血鬼達を行動不能に追い込んでいく。
近接戦闘に限定すれば間違いなくいっぱしのGS以上の実力だわ。
昨日の一戦で、横島は一体どれほど学習したわけ?尋常じゃない進歩、昨日とは別人ね。
器用に攻撃を捌きながら、それでもマリアとともに姿の現れてしまった私たちを守るように敵を薙ぐ。

「今よ、冥子!!こいつらまとめてアジラの炎で石にしてやるワケ!!石にしとけばこれ以上襲ってこないし、死にもしないわ!!」

冥子の式神、辰のアジラの炎に焼かれたものは燃えずに石化してしまう。アジラによる解呪は可能だから、敵を確実に無力化するのには便利な能力よね。
もっともこの能力にかぎらず、相手の状態を異常にさせる能力って格の高い相手にはあまり意味がないわけよね。
それは私の呪いも例外じゃなく、霊体撃滅波、霊体貫通波を除く私の能力の大半はあのブラドーに効かないのは間違いない。
ほんと、間違いなく『適材適所』なワケ。ピートと一緒にいられないのは残念だし、おいしいところを持っていかれるのは癪だけど・・・・大ボスは任せたわよ、令子。












どうやら、小笠原さん達はうまくやってくれたらしい。
そう考えるに至ったのは地下通路から城の一階へ進入できた時だった。
城の内部はもぬけの殻。正に作戦通りといった展開に喜びながらも、うまく行き過ぎているような不安を拭えない。

「OK、首尾は上々ね。―――でも、なんっかスッキリしないのよねぇ。担がれてるって感じだわ・・・。」

僕と唐巣先生に続いて地下通路から這い出してきた美神さんは、髪をかきあげながら面白くなさそうに呟いた。

「ありうることだね。永く生きる彼らはその知恵も人を凌駕する場合が多い。吸血鬼には悪魔的なイメージがついてまわるが、そういった狡猾な部分に対する恐怖を象徴しているのかもしれないね。」

その言葉を受けて、続いて出てきた飛鳥さんは眉をしかめる。

「あながち間違いはないかもね。年経た吸血鬼は悪魔――魔族に匹敵するほど厄介じゃん。」

「はんっ、上等じゃないの。どんな策で来るか楽しみだわ。」

そう言って不敵に笑う美神さんは、この状況にあって非常に頼もしく感じられた。

「・・・あたりまえですが、僕はこの城のつくりについてブラドーに劣らないほど知っています。この先の廊下から上の階へ昇れるのですが、本来ならそこには常にブラドーの近衛が見張っているはずです。恐らくは、今も。ブラドーには及ばずとも、彼らはこの島でブラドーに告ぐ実力を持っていますから、油断はできませんよ。」

そう、彼らの存在が最も障害になる。ブラドーだけでも分がいいとは言えないのに、近衛達までいたのでは更に分は悪くなる。
彼らもまた、ブラドーに及ばないとはいえ旧き血の吸血鬼。正直、勝てるかどうか・・・・。

「私には一応秘策があるのよ、吸血鬼なんてちょちょいのちょいでしばき倒してやるわ。」

そんな僕の不安は、この人の相手を陥れることを楽しみにしているような笑みを見る度に消え去る。
いや、恐らく僕に限らず、消え去るというよりはこの人に対する不安にすり替わってしまうんじゃないだろうか。
ほら、現に唐巣先生は俯いて祈りだしてしまったし。

「さぁ、さっさと行こうよ。ここまできたらパパっとやっちまうっきゃないじゃん。」

飛鳥さんに促されて僕たちは近衛たちに守られているだろう、ブラドーの眠る一室へと向かった。





いけるじゃねーか。

それが感想だった。めちゃめちゃビビッてたけど、思ってたより俺はやれてる。
身体は自然と動いてくれるし、吸血鬼の動きだってかろうじて見えている。油断させていれば、それこそ問題にならない程度には。
心眼も俺に任せる腹づもりらしくおとなしくしているので、その信頼に答えてやんなきゃな。
とっさに捌くことができない攻撃は無様にでもかわしてみせる。その姿が情けなさ過ぎてか、油断する吸血鬼。
けど、俺からしてみりゃ、それが致命的だった。たやすく切り捨てる。は――――、飛び散る鮮血は人間と同じように真っ赤。
一瞬、意識にかかった靄を払って、周囲に気を配る。が、後方からの不意打ちに対応できずに背を切り裂かれる。

「うわッちゃぁーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

痛いッ!!背中熱!!痛みは茫洋としてるのに何か流れてるような感覚がやけにリアルで眩暈がしてくる。

「急急如律令!!」

念動力で符を滑り出させ、符に書かれた祈願を命に乗せて強化、発動する。
書かれているのは退魔。俺の霊力じゃ動きを止める程度で限界だが、それでも十分だ。

『私が傷を塞ごう。お主自身の霊力を使うからな、心構えはしておけよ。』

突如開いた心眼が俺の傷の治療を始めたらしい。
ああ、と頷いて動きの止まった吸血鬼のどてっ腹に刺突を当てる。
突き刺さった霊波刀を振りぬくと、俺の背の傷の痛みがだんだんハッキリしてくる。
同時に、全身に気だるい感覚が現れる。それはきっと俺の霊力が使われている感覚なんだろう。
背傷の痛みが引いてくる。おー、俺って前世でもこういう治療系の術って知らなかったからなぁ。
こんな感覚になるものなのか。でも、霊力の消費は激しいっぽいな。

「ま、せいぜい同士討ちしてるといいわ。馬〜〜鹿。」

俺以外の二人の前衛はどうなってるのかとちらりと横を見ると、タマモが吸血鬼たちを手玉にとって同士討ちさせていた。
幻術ってやつか。自分に対する攻撃に注意を向けさせてる間に幻術にはめちまう、すげーな。

「ヨコシマッ!抜けられてるわ!!エミと冥子のほうにたくさん・・・・」

しまった、ついよそ見っ!!!

「ノープロブレム、ミス・タマモ。マリアに・任せる。クレイモア・キック!!」

俺の横を抜けていく吸血鬼に向けて上げたマリアの脛が開いてベアリング弾が噴き出す。
指向性を持って飛び散るベアリング弾が飛び散り、吸血鬼たちの皮膚を突き破った。
血飛沫を上げた吸血鬼たちは、痛みのせいか動きが鈍っている。
うお、ナイスフォローっつーか、ナイスすぎだな・・・・。

「エルボー・ミサイル!!!」

マリアの腕から放たれたミサイルが吸血鬼たちを巻き込んで爆炎を上げ、焼尽の残滓が肌に吹きつける。
い・・・・生きてるんやろなぁ・・・・・・。ヘタすると死んじまってるんちゃうか?
傷を治療するのに霊力が回されているからか、霊波刀がしぼんできた。霊力をつかわんようにせんとあかんな。
む、暴れまわってるる式神をうまく利用できないだろうか。式神は細かい制御をされていないらしく、時折見当違いな動きをしている。
もっと効率のいい使い方はないもんか。

「・・・なぁ、心眼、ちょっと手伝ってくれねーか?」

バンダナに向かって小さく声をかける。

『事と内容次第だが、なんだ?』

額の辺りから声が聞こえてくる声に安心感を覚える。
俺にはこいつがいる。やってやれないことはないはずだ。

「式神に吸血鬼達をぶつけてやることはできないか?俺だけじゃどうもかわしきれそうにないから、ちょっと誘導してくれるとありがたい。」

吸血鬼達を牽制しながら、できるだけ簡潔に主旨を伝える。

『まぁ、容易いだろう。やつらはグールとなり使役されているだけ、思考能力は著しく低下しているからな。と、早速だが後ろを振り向け』

少し考えているような間の後に、俺の思惑に乗る旨の返答がきた。って、後ろ?

「うっひょあああ!!?」

ちょっと相談事してる間にこんなに後ろにいたんか。油断したらこりゃ終わりだな・・・。

『斜め左後ろに全力で転がれ』

難しい注文だな、けどなんとかやるっきゃねぇ!!
石畳に肩をぶつけちまって地味に痛いが、先程まで自分がいたところには吸血鬼の腕が刺さっている。
あ、あぶねー・・・・。

『次はそのまま20m全力でまっすぐ走れ』

焦った様子もなく淡々と指示を出す心眼だが、指示は何を目的としてるのかいまいち把握しづらい。

「おいおい、大丈夫なのかよっ・・・」

だからやっぱ、不安になるわけだ。でもとりあえず走る。
背を向けたのを好機と見たか、後ろから吸血鬼たちが追いかけてくる。
すこしばかりタマモたちのほうに向かったみたいだけど、こっちには後衛がいるはず。
やばくないのか?

『多少の攻撃は私が逸らしてやる。』

それなら安心して逃げられる。・・・ってちょっとまってくれ!

「俺の霊力を使って、だろっ!!」

気絶するわい。そもそもこの作戦だって霊力が尽きかけてるから提案したんだぞ!

『うむ。・・・・もっと煩悩を出せ。霊力が尽きてしまうぞ。』

そこではた、と気がついたようにさらりと言う心眼。
・・・・はっはっは、おいおい。

「アホかーーーーーーーーーーーーーー!!こんな状況で興奮なんぞできるかぁッ!!!」

そうともっ!!こんな緊迫した状態の中で、しかも何の眼福もなしにッ!!

『タマモ殿は先程からスカートで跳ね回っているようだが・・・・?』

「・・・・・!!!」

ちぃぃ!俺としたことがノーマークだったぜ・・・はっ!!

「お、俺はロリコンじゃないんや!!」

ほ、ほんとだぞ。

『小笠原殿は最初から呪術用の衣装で派手に儀式を行っているが?』

まっすぐ走りながらちらと目を向ける。

「なんだとぉッ!!!!!!!」

こ、これは・・・!

「煩悩全開!!」

ははは、こんにちわ青春。ぜんぜん、元気が出てきたぜ。
吸血鬼たちなんて問題にならない身のこなしで20mを走りきる。

『よし、それだけあれば十分だ。次、下を向いて思いっきりその場で上に飛べ。』

?よくわからんけど思いっきり、ね。
とりあえず下を向いてから全力で飛び上がる。
すると額から霊波砲が放たれ、俺の身体は5mくらい吹き飛んでしまった。
おいおい、これって俺がやばいんじゃないのかよ。
が、俺を追いかけてきた吸血鬼たちは斜め前方から突進してきたビカラに跳ね飛ばされて、石柱や壁に叩きつけられる。

『次だ、とりあえず無防備で地面に落ちろ。』

「死ぬわ!!」

『まかせろ、着地間際にお主の念動力を使用して軟着陸する。見た目だけ痛そうにしていればいい。』

「そ、そうか。」

っていうか、器用だなこいつ。俺の能力を俺の意識外で制御するって。
勝手に俺の身体動かせたりせんだろうな、まじで・・・・。

「のわあああああああああああああッ!!」

着地と共に俺の悲鳴が広間に響き渡る。なさけねぇ。
いや、痛くはなかったさ。すっげー怖かったけど。

「ちょっとまてぇえええええええええええええええ!!!」

倒れてる俺を囲むように立っている吸血鬼たち。正気の感じられない目つきで佇む姿には恐ろしい圧迫感がある。
まずい、さっさと立ち上がんなきゃ死んでしまう。

『そう焦るな、まだ寝ていろ。私がいいと言うまでだ。』

な、おいおい、俺を殺す気か・・・・?いや、ここは信じて寝っ転がってるしかないな。
轟音と共に、俺の頭上を何かが横切った気がした。我に返ってみれば俺を取り囲んでいた吸血鬼たちはいつのまにかいなくなっている。
いや、あれは・・。

「シンダラが吹き飛ばしてったのか。・・・・・なるほど。」

やはり心眼は頼りになる。こういう指示が出せるのも常に周りに気を配ってるから。
必要最低限の情報しか与えないのは俺をビビらせないため・・・・か?

『さて、そろそろのようだぞ。』

息をつくような色をにじませて心眼が俺に声をかけた。
は、何が――と、問い掛けたところで疑問は氷解。まぶしい閃光と共にエミさんの声が聞こえてきたからだ。

「霊体撃滅波!!」

響き渡る凛とした声と重なって迸る光が撃滅すべき対象すべてに襲い掛かった。
呪術によってくくり、相手を霊的に破滅させるよう強化された霊波を緻密に重ね合わせた上で、殲滅すべき対象をその霊波動によって呪う。
詳しいことは解らないけど、こんなメカニズムで出来ているのではないか。出来るだけ単純にまとめてもこの手順。
あの程度の時間で実現するエミさんはやっぱり超一流ってことか。
よっしゃ、俺も負けてられんへんで!!
まぁ、俺の切り札はまだ温存しておきたいからとりあえずはいつものやつ!!
ってやべっ!!

「うわちっ、あぶねーな!悪いけど痛い思いしてもらうぞ!!俺達が痛いのはもっと嫌だからなっ!!!」

あぶねー・・・。もう少しで首がもげるとこだった。
そんなことを考えながら、出力が落ちたままの霊波刀を煩悩でどうにか出力を戻して吸血鬼の神経やら筋肉やらをズタズタにしてやる。
さすがにしばらく動けないだろッ!!だがそこで止まってしまうわけには行かない。
残った敵は少数、さっさとケリつけてやる!!!
肉を刺し貫き、断ち切る感触ばかりがクリアで、怪我の痛みや息苦しさは茫洋としていく。
解ってくる。そう、こういうことだ。闘い。あらゆる感覚で、強烈に体感させられる闘い。
陰陽師としての前世では経験したことのない、緊張感と痛みと興奮、それに同居する凍てつくような思考の冷静さ。
俺は、知らないはずのこれを知っている。なら、俺は誰なんだ。・・・・はっ馬鹿な、俺は「横島忠夫」だ。
美人のねーちゃんが大好きな、ただの高校生だ。

「これで、終わりぃ!!」

そして、最後の一体を切り伏せる。

「――見事だ。まずは貴様らの健闘を称えよう。」

何の姿もないまま響く声に身構える。
エミさんも、冥子ちゃんも、タマモも、マリアも。
幻聴じゃない。俺たちの目の前で、霧状の何かが形を成していく。






「おかしいわね。誰もいないじゃない」

言葉にしてみて、改めてこの異常性を実感した。
交戦までしたのだから、私達がこの島に上陸したことは確実に知っている。
その上で自分の寝首をかかれるリスクを放置したままなんてことはあるはずがない。

「運よく巡回中だなんてことは、・・・ありそうにないね」

酷く確率の低い楽観論を口にしてみて、すぐに打ち消す唐巣先生。
さて、そうでないなら既に考えられることはひとつ。
あの旧き吸血鬼の王ブラドーは陽の呪縛を克服している、ということなのではないかしら。
夜の加護は得られずとも、陽の光が絶対の恐怖対象ではなくなっている可能性は低くない。

「もしかしたら、ブラドーは活動中なのかもしれません。だとすると小笠原さん達が危ない」

そう、もし陽の光を克服しているのならピートが漏らした懸念は間違いなく現実のものとなっているわね。

「そうね。とりあえず突入、確認してから合流といきましょうか」

限りなく零に近い可能性かもしれないけれど、たいした手間じゃないもの。確認はしておかなくちゃ。

「私から突入する。私なら不意打ちでも死ににくいじゃん?」

冗談めかして言ってから、飛鳥は扉を翼の弾丸で吹き飛ばす。
そして油断なく部屋の中に突入し、続いて突入しようとしていたこちらに声をかける。

「棺が開いてるじゃん!もう、ここにブラドーはいないよ!!」

その声を聞くのとほぼ同時に私は駆け出していた。

「戻るわよッ!横島クン達が危ない!!」

後ろから先生が走ってついてくる足音が聞こえる。

「僕は一足先に行きます、皆さんも急いで!」

そう言うとピートは霧状になって、城の壁に入った僅かな亀裂の間に消えていった。

「私も先に行くじゃんッ!・・・無事でいてよ、横島ッ!!」

飛鳥も城の通路を器用に加速しながら飛んでいく。
よほど横島クンのことを大事に思っているんでしょうね。
あんなスケベ小僧にねぇ。・・・・・妊娠したって知らないから。
!・・・なんで私がイライラすんのよ。ああ、もう、生きてたらシバキ倒してやるわ!!
だから、私たちが行くまでは無事でいなさいよね・・・!





霧が人の形を成し、ぼやけた輪郭が徐々に本来の姿を取り戻していく。
美しいが癖の強い金髪、涼しげな目元に通った鼻筋。そして白い肌と薔薇の唇。
チキショー、こういう美形がいるから苦労するんじゃー!!!
ピートに瓜二つの美形男がお供の仮面男を二人もつれてそこに現れたのだった。

「フフ・・・悪くない腕だな、諸君。流石はピートが「くほぉ〜〜のぉおおやろぉお〜〜」・・・なに?」

なんか言い出したが、俺の地の底から沸き上がるような素敵な声にかき消されてる。
貴様では俺のように血の涙と鼻血を吹き散らしながらのミラクルボイスを発することなど到底不可能だろうな。

「お前みたいなんがいるから、俺のほうには女の子が全然まわって来ないんや〜〜!!」

うおお、なんだか新境地だ。煩悩パワーというか、嫉妬パワー。
いや、霊力はまったく上がってないけど、この身体中にあふれるエネルギーはなんだ。

「覚悟しぃや、※きっさ〜ん!!!!(※貴様)」

飛び掛るべく身体を沈みこませ、次の瞬間。

「ぐぶォ!!?」

後ろから誰かにどつかれた。ちょーいてぇ。

「ちょっと、おたくはだまってて。・・・で?おたくがブラドーさん?」

エミさんが一歩歩み出て、現れたピート似の男に向かい合う。

「いかにも。余がこの島を統べる吸血鬼、ブラドー。貴様らは余を滅しに来たハンターといったところかね?」

黒いマントを纏った男は薄く笑みを浮かべて尋ねる。

「まぁ、そんなものよ。で、おたくはどうして世界征服なんてアホなこと考えてるの?」

エミさんはブラドーに尋ね返す。
まぁ、当然といえば当然の質問だった。どうまじめに考えようとリスクが大きすぎてアホくさい。

「ふん、言っても解るまい。我々は人とともにあることはできないのだからな。ならばどちらかが支配する側に回らなければならんのだ」

アホらしい、馬鹿らしい話なのにも関わらず、その言葉には妄言を吐いているわけではないと解った。
明確な理想があり、目標があるから、無茶であっても掲げなければいけないと。
この男の瞳はそう言っているように俺には思えた。

「アンタ本気で馬鹿なわけ!?何を意味のわかんないことを――!?」

単なる妄言だと、頭ごなしに否定しようとするエミさんを俺は何故だか手で制していた。

「エミさん、こいつは本気で言ってる。苦労も無茶も承知の上で。やるべくしてやろうとしてる」

理解できるのだ。この男の目を、態度を、言葉を、俺は。
重みだなんて陳腐なことを言うつもりはない。ただ、知っているのだ。
過去、そんな目を俺は見たことがあったのだろうか。
遥か前世?それとも・・・。

「ふ、くく、いい目を持っているのだな」

笑い声を漏らしながらも目は笑っていないままブラドーはこちらに目線を向ける。

「よっぽどの理由があるんじゃねーのか?」

こちらも目を逸らす気はない。やるのならこっちだって隙を作る余裕はないからな。

「話す必要などないがな。我が内にだけあればいい」

そう呟く言葉に呼吸を忘れる。
こいつを説得することができないとどんなに語られるよりも理解させられてしまった。
もはや、語るまいとお互いの陣営が臨戦態勢に入ったところに。
嵐の前の静寂に無防備なコツコツという革靴の足音が響く。

「さて、ワシには大体のことが解るがのぉ。説明してやろうか、なぁ吸血鬼よ?」

ビロードの黒いコートをたなびかせ、不老不死を冠する怪人がそこにいた。

「欧州の魔王、Dr.カオスだと!?」

ブラドーが驚嘆の声を上げ、憎々しげにDr.カオスを睨みつける。

「ついさっきまで思い出せんでな、ずっと考えこんどったんだが・・・ようやく思い出せたよ」

だが、射殺すようなその視線も柳に風とばかりに受け流してカオスは言葉を続ける。

「耄碌したようだな、魔王。もはや貴様など恐れるにたる存在ではない。引っ込んでいろ」

口元を歪めて言うが、ブラドーの目元はまったく笑っていない。

「よく言ってくれる。だが、ワシにはお主が何故世界征服などという馬鹿げたことを考えておるか手に取るように解るぞ。・・・ワシがもう300になろうかという頃、お主は吸血鬼の身でありながら人間の妻を娶った。そこまではよかったんだがの」

余裕ありげにニヤリと笑って、カオスはさらに話し続ける。

「・・・やめろ」

ブラドーはガラスを引っ掻いた音を聞いたような顔つきになり、そう呟く。

「お主の妻は殺された。人間によって、吸血鬼を憎み・・・恐れる人間の手によってな」

これはカオスによる作戦なのだろうか。
吸血鬼の心の傷痕を抉って、いったいどうなるというのか。
それは一見、恐ろしい危険を伴う行為に思えた。

「・・・だまれと言っている!」

ブラドーは怒りに任せた、獣じみた獰猛な動きでカオスを八つ裂きにすべく爪を振るう。

「手の内はわかっとるよ。忘れたか。お主は一度ワシに打倒されている。・・・そしてお主は全ての人間を恨み、全ての人間の血を絶やそうとした」

けれど、それを見切っているかのようにかわしてカオスはなおも傷口を開き続ける。
これがカオスの出した答えか。血の冷えた復讐鬼ほど恐ろしいものはないと、あの爺さんは考えたのだろう。
だからこうしてまた激情を引き出すべく、心の傷痕を抉り続けているのか。
皮肉なことに傷痕が深いほど、恨みが深いほど彼らの持つ脅威である叡智は失われていくのだ。
沸血が冷静な思考を焼き、ただ感情のまま力を振るい続ける獣と化す。
それこそが、Dr.カオスの思う壺ってことだ。
本来ならそれは墓穴を掘るような愚策かもしれないが、この永きを生きる錬金術師にとっては必要不可欠な上策だったのかもしれない。

「それがなんだというのだ」

――だが、吸血鬼は我を取り戻してしまった。同じ愚は犯すまいと、血を凍らせて。

「ふん、600年近くも昔と同じ轍は踏まんということか。だが・・・気づいておるのか?お主がそうすることでお主に残された仲間や息子さえ失うことになりかねんということに」

鼻を鳴らしてDr.カオスは諭すように言葉を続ける。それは旧友を心配するような響きすら伴う。
お互いを本気で殺すべく動きあった二人の間にあるのは人外の友情とでも言うべきか。
気の遠くなるほど昔に長く殺しあっていた宿敵にして、数百年来の旧知。俺みてーな一般人に毛の生えたような高校生には解らんな。

「お主の血はもう冷えた。復讐は冷静に注意深く、支配の伝染によって抜け目なく進むことになるかもしれん」

カオスは目を閉じて、淡々とブラドーの力の強大さを認める。

「しかし、その道は容易ではないぞ。現代はGS協会という世界に根を張る退魔組織が存在しているから、の」

そして、瞼を開けて吸血鬼の王に視線を投げかけた。本当にやるつもりなのか、と暗に問いかけている。

「・・・それでもやらねばならぬのだ。もはやそれ以外に余はあれに手向ける花を持たぬ」

苦恨を噛み締めるように呟き、もう語るまいと口を閉ざす。

「!?・・・横島・・・」

吸血鬼の強大な魔力を敏感に感じ取ったのか、タマモは俺の後ろで戦慄した呟きをもらした。

「やるしかないってことだな」

霊波刀を構え、俺も覚悟を決めることにする。

「そのようじゃのー。準備は良いか、マリア」

「イエス。ドクター・カオス」

やれやれ、と面倒くさそうに声をかけるカオスに、律儀に答えるマリア。

「私達をのけものにしといて、まったく使えないジジイなわけ」

エミさんは悪態をつきながらも顔は真剣そのものだった。

「エミちゃん、下がって〜〜。式神で結界を張るわ〜〜〜」

冥子ちゃんの具体的な指示が引き金となって戦闘が始まった。
純粋な魔力がブラドーから発せられ、石床ごと俺たちを圧壊すべく迫ってくる。
エミさんは転がるように冥子の横まで一気に下がり、意外にも器用なカオスはマリアの前に立って魔力の一部を吸収し始めた。
皆すげぇなぁ、ってちょっと待った。俺は!?
結界に入れてもらう?下がり遅れた、無理!迫る魔力を吸収する?そんな手順も方法もわからんがな!
言霊によってこの魔力を禁ずる?禁じきれなくてジ・エンド!サイコキネシスで相殺?受け流すことすらできない出力だっちゅーの!
あ、いや、もしかしたらめっちゃ集中すればテレポートできるんじゃないか?絶対長い距離は無理だけど近い距離ならもしかすると。

『どうするつもりだ、横島。まずいぞ!!』

心眼の声で我に返る。

「って、やば、マジでもう間に合わん・・・!?・・・死ぬのは嫌じゃーーーーー!!!」

長考は死を招くんだな、チクショー。やるしかない!その魔力の並みの向こう側。ちょっと目の前のその場所でいいから!
イメージだ、重要なのは俺がその場所に立っているという確信・・・!!
激しい頭痛とともに身体が掻き消えるような、いや、その場所に「立っていく」感覚。
一瞬の不可思議な感覚と未だに残る激しい頭痛、だが俺は少し目の前のその場所に立っていた。

「成功!!」

仲間の皆は一瞬呆気にとられたような表情になったものの、そんな場合じゃないとでもいうように戦闘に集中する。
・・・そんな意外か。俺があれ避けるの。

残る敵はブラドーとその近衛が二人。ここにこいつらがいるってことは俺達の作戦はしくじったってことだな。
美神さんや飛鳥達がやられたってことはたぶん・・・ないはず。
そんなことを考えてる間に、近衛の一人が俺の眼前で爪を振り下ろす。

「うぁちっ!?」

紙一重でそれを避ける。やばい、余計なこと考えとったら死ぬ!
既にブラドーはマリアが引き付けており、もう一人の近衛はタマモが相手をしている。
エミさんが呪術で前衛で援護をしており、冥子ちゃんが無防備になるエミさんと自分自身を十二神将結界で護っていた。
俺も・・・・やってみせる。俺がこいつを止めなきゃ、負けちまうかもしれないんや!
こいつも精神支配を受けているはずだ。こんな強そうなのと真っ向勝負なんて、まだGSですらない俺によく言ってくれたもんだ。

「心眼、頼む!」

『うむ。お主を勝利に導くのが私の役割だ』

心眼にサイコキネシスのコントロールを任せ、ハンズオブグローリーを両腕に発現し、相手に向かって構える。
言葉もなく襲い掛かる吸血鬼は今までのどの吸血鬼よりも動きは洗練されていた。
精神支配を受けていても身体が動きを覚えているってことか、厄介な。
だが、まだ俺でも対応できる動きなんだから良かったって言っておくべきか。
迫る爪を両手の霊波刀で受けては隙を見て反撃――などできなかった。
受ける、だなんてどれほど身の程知らずだったのか。一撃が重過ぎる。
とっさに心眼がサイコキネシスを応用して負荷軽減していなければ骨ごと粉砕されていた。
小竜姫様は俺の攻撃を真っ向から受けるというよりは力を受け流していたように見えるし、美神さんだってそうだ。
ちっくしょー、受け流さなきゃ死んじまうってか!?
うまく受け流せてないのは百も承知ながら、不恰好に相手の攻撃をかわし続ける。
早い、重い、加えて動きも雑じゃない。なら――!

「存思の念、行動を禁ず!魔よ退け!!」

言霊を呼気と共に吐き出して一撃分の隙を作りだし、呼気にあわせて霊波刀で胴を薙ぐ。
飛び散る鮮血に手ごたえを感じ心の中で安堵を覚えるも一瞬、傷口はふさがり始める。
ふざけるなよ、今は昼だぞ!?ええい、まだまだ!!

「破魔符を急所に!」

それだけいうと俺は相手の攻撃にあわせて後ろに大きく飛んだ。

『了解した』

十数枚の破魔符が吸血鬼の目や鼻や口や耳、延髄、水月などの急所に張り付いて爆発を起こす。
煙が晴れるとそこには影も形もない。馬鹿な、俺の霊力で作ったものだ。威力は嫌というほど知っている。
あとかたもなく雲散霧消させるような威力などはない。
「なっ!?」

背後に気配を感じて身をかわすと、一瞬前まで俺の頭があった場所を吸血鬼の腕が薙ぎ払っていた。
まだ完全に実体ではないようで、周りの霧が集まって身体を形作っていく。
吸血鬼は身体を霧に変えられるのか、時間のかかる攻撃じゃ駄目ってことじゃねーか。

「――――!!!」

声にならない声をあげて吸血鬼は光を伴う衝撃波を発する。

「は、こっちだってなぁ――」

脳髄がはちきれてしまうような激痛を無視してやつの背後に立つ自分をイメージ!!

「似たようなことくらいできんだよぉ!!!」

背後に現れた俺は吸血鬼の背中を袈裟斬りにしてやる。
次、腕!返す刀で両腕を同時に斬りとばし、胴を蹴って間を空けた。
すぐに身体が再生していくのを見て、やっぱりな、と毒づいた。

「殺すのは止められてるし、俺自身ヤだし、どうすっか」

けれど、これでは千日手もいいところだ。
それは俺だけではなく、タマモも同じのようだった。
幻術に嵌めてしまうことはできても、それを持続させているだけで決め手にかける。
そしてマリアとカオスは俺たちよりも苦境に立っている。
エミさんの援護もあって実質3人がかりであるにもかかわらず、追い詰められているのはカオス側なのだ。

「横島ッ!!」

「みなさん!!」

だが、そこにようやく援軍が現れた。
翼の弾丸で三人の吸血鬼を狙撃してみせる飛鳥と、その隙を突くように自らの父親の背に腕を突き刺すピートの姿に正気を見出す。

「・・・ピート、息子よ。お前には教育をやり直す必要性がありそうだな」

けして大きい声ではなかったが、吸血鬼の王が覇者の威厳を持って場の空気を自らのものとしてしまった。
なんて圧力を持った雰囲気を醸しだすんだ、こいつ。これが旧き血の吸血鬼・・・恐れられてるのも頷ける。

「父さん・・・いや、ブラドー。解らないのか、お前がそんなことを考えるばかりに島の皆が危険にさらされる!!」

だが、そんな圧力など感じていないかのようにピートは声を荒げた。

「それは解っている。だがその危険を恐れていては、いずれ同胞たちも我々もヒトに支配される。我々が人間を支配することが我々にとって最善だと、なぜ解らない」

その顔が苦渋を舐めたような表情にかわり、苛立たしげにピートを睨む。

「そんな、僕らだって人間社会に共存することができるはずだ!!考えをあらためろ!!」

ピートは挑むように睨み返してブラドーの説得を試みる。

「だからそれが支配されているということだ!人間たちのルールに我々は従わされる、それが我々にとってどれほど理不尽であっても!!・・・危険だからという理由だけで殺されることさえあるのだ」

覇気の篭った言葉をピートに返し、ブラドーは逆に説得しようとしているように見える。
だが、その声に含まれた悲哀を伴う感情は、かけがえのないものを喪った悼み。
どういうわけか、解る気がする。俺はかけがえのないものを喪ったことがあっただろうか。

「そんな野蛮な時代はもう過ぎたんだ、僕らだってうまくやっていける。時代は変わったんだよ!もう、大丈夫なんだ!!」

それでもピートは自らの父に呼びかける。真剣そのものの表情で、必死に。

「変わらんよ。時がどれほど経とうとヒトはヒトだ。むろん、ヒトに限ったことでもないが、本質はそう変わるものじゃない。我々は狩らねば狩られる立場にあるのだ。今も昔もな」

諦観したように浅く息をついて、小さいが力ある声でブラドーはそう言った。

「話しても解らないなら、力でとめてやる!」

もう、これ以上言ったところで無駄だと悟り、ピートは戦う態勢をとった。

「・・・余も同じ心境だよ、ピート。余はお前を喪うわけにはいかないが、それでも相応の罰は受けてもらう」

慈しむようにピートを見る目は優しげで、この吸血鬼の王が息子を本当に大切に思っているのがよく解る。
そしてまた、お互いが戦闘態勢に入ったとき――。

「――感謝をもって主に歌え。竪琴で我らの神に賛美歌を歌え」

荘厳なる賛美の歌声が響き渡る。

「神は雲で天を覆い、地のために雨を備え、また山々に草を生えさせ、獣に、また鳴く烏の子に食物を与える方」

聖なる賛美歌と共に、足音さえも荘厳に響き渡った。


続く。
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