妙神山を登る俺達4人は体力も既に限界だった。
結局、話を聞いたおキヌちゃんもついてくることになり、四人となった妙神山を登る俺達は体力も既に限界だった。

「わ〜、目の前が白くなってきましたね。」

「神気を強く感じてくるようになってきたな。少し調子が悪くなってきたじゃん。」

訂正、俺と美神さんは体力の限界だった。
でも幽霊と魔族は元気らしい。
そして俺達は目的の場所に着く。

「!・・・ここね。」

妙神山修業場と書かれた看板があり、門には鬼をかたどった飾りがついている。

「ここを通りたければ、我等を倒してからにしてもらおうか!!」
「我等鬼門を倒さん限りこの門は開かぬと思え!!!」

門が喋りだすなんて聞いてないぞ!
びっくりしたじゃないか、もう。




GS〜彼が追った夕陽〜
第5話 妙神山




で、その後起こったことはもう馬鹿らしすぎて・・・。
結論から言うと門はすぐに開いた。
管理人である、角を生やしたショートの赤毛の美少女が中から門を開いてしまったのだ。
しかし可愛かった。時代がかった衣装をつけてるのも新鮮でよかった。
だが可愛い系にもかかわらず、年上の落ち着き。・・・おおっ?俺の中に新たな世界が!
・・・そんな拍子抜けすることがあったからか、鬼門の威圧感は0になった。
一応、鬼門の試練があったのだが、そこは美神さん。
首のない身体が襲ってくるのを避けて、顔にお札を貼って目潰しという、あまりにもお粗末な戦法だったんだが。
管理人によれば、変則的だが記録更新だったらしいけど。
普通は思いついても自制してしまうようなセコイ真似をするのが美神さんのすごいとこだ。
そして美少女は実は小竜姫という竜神様だと判明したんだった。
俺だけじゃなくて皆吹っ飛んだ、わはは、いつもの俺の気持ちわかってくれましたか、美神さん。
結局修行はつけてもらえることになり、今に至る。
修行場というよりは銭湯みたいだな。薄汚れた感じではないが、時代を感じる造りだ。

「じゃあ、服を着替えてください。」

美神さんに道着のようなものを渡しながら言う小竜姫様。
しかし、俺の目線は小竜姫様の細い腰に釘付けだ。
そらもー、とーぜんやないかっ!!
俺だっていつまでも『ちちしりふともも〜〜!!』なんて叫んでないぜ。
人は成長するもんだ。
今や俺は腰だって好きだ。それが通ってもんやないかっ!
着替えをするなら手伝わなくちゃな。
さて、小竜姫様の腰帯は・・・と。

「じゃあ僕、手伝いますね。引きますよっ、いいですかっ!?」

俺は悪くないんやっ、この銭湯っぽい空間が男の性をむき出しにっ!

「私に無礼を働くと・・・・・。」

小竜姫様の声の温度がさがる。
殺気!?
いかん、退避せんと死んでしまう!!

「神罰が下りますよ!!」
「わっ!!」

小竜姫様の振り向き様の斬撃をしゃがんでよける。
ほんとに、ごく数mmの所を剣がかすっていった。
やばい、冷や汗がとまらねぇ・・・。
なんか、感心したように小竜姫様がこっちを見てるけど、心臓がバクバク言ってそれどころじゃ・・・。
ボコッ!
いたっ!!

「すみません、コイツってホンットーに馬鹿で!!」

「いえ、わかっていただけたらそれで・・・・、あ、道場に入る前にこちらに着替えてくださいな。」

ぺこぺこと謝る美神さんと苦笑いして手を振る小竜姫様をボーっと見てた俺の耳に小さな呟きが飛びこんできた。

「横島・・・・。」

そう呟く飛鳥からは、なんか美神さんから感じるものとはまた違ったプレッシャーを感じる。
罪悪感とでも言うのだろうか。
くっ、負けるな俺!!

「ボクはとりあえずただの付き添いなんでこうやって番台に座らせていただければそれでっ!!」

「え?」

一瞬、小竜姫様がえらい真面目な目線でこっちを見たよーな。
しかし、美神さんが投げた桶が直撃した俺としてはそんなことは定かではない。

「そいつはただのアシスタントなんでその辺にほっぽっといちゃってください!」

番台の向こう側から美神さんの声が飛んでくる。
なんてことゆーんだ、美神さんは。

「ふーん・・。」

まじまじと小竜姫様がこっちを見ている。
だが!!今はそんな場合ではない!!!着替え、美神さんの着替え!!!
覗くっきゃないやないか!!
って、飛鳥とおキヌちゃんがこっちに来る。

「ああっ!!はなしてくれ!!おキヌちゃん!!飛鳥っ!!!」

「ダメですっ!!」

「それは無理じゃん!!」

戻ってきた美神さんの手によって俺の意識は闇へと落ちる・・・ことさえ許されず、ぼろ雑巾のような姿で床を汚した。

「私も着替えるのか?じゃあさっさと着替えるじゃん。」

「こんなとこで着替えようとすんな!!」

「いぎっ!?」

なんか、いろいろやってる美神さんたちの裏側で、俺はセコセコと自分の血のついた床を拭う。
あれ?なんだか涙がっ・・・!?

「見学の方も一応着替えてくださいね。」

小竜姫様が道着のようなものを渡してくる。
やれやれ、着がえるとするか。




着替えて扉を開けると、その先にはどこまでも平原が続いているわけで。

「って、はぁ!?」

いや、意味がわからん!ちょっと待ってくれ。

「なるほどね、異次元につながってるのね。ここで修行をつけてくれるってわけ?」

美神さんが一つ隣の扉から出て来ながら、隣の小竜姫様に聞いている。

「ま・・まだ痛いじゃん・・・・。」

続いて頭を抑えながら飛鳥が入ってくる。隣で心配そうにおキヌちゃんが様子を見ている。

「大丈夫か?美神さんのドツきはきっついだろ。」

声をかけると涙目でこっちを見てくる。
なんか、イメージ違って可愛い気がするぞ。

「横島、さっきもドツかれてたけど大丈夫か?」

身を持ってあのドツきを体験したからか、少し心配そうだ。
結構俺は慣れてしまったのかもしれない。
あのドツきを慣れてしまえる俺がちょっと好きだ。

「ああ、慣れてくると・・・。」
「ではその法円の中に入ってください。」

お、説明が終わったらしい。
美神さんが法円の中にはいるとなんか黒い衣装を纏ったマネキンみたいなのが闘技場に出現した。

「これは影法師。あなたの霊能力そのものと言っても良いでしょう。」

「なるほど。」

「これからあなたには三度戦ってもらいます。そして勝つごとに能力を上げましょう。」

「面白いじゃない。やるわ!」

即答する美神さんにクスリと小竜姫さまが笑った。

「戦いに負ければ待っているのは死です。覚悟してくださいね。・・・では、最初に戦ってもらうのは剛錬武。」

闘技場に出てきたのは岩でできたような一つ目の化け物。

「ひぇえ、口が二つついてる!」
「魔術で生み出されるゴーレムとは別物みたいじゃん。」

「行けーーーーっ!!」

美神さんの影法師が矛で剛練武の身体を突く。
が、軽く弾かれている。

「硬い!!」

「剛練武の甲羅はそう簡単には貫けませんよ。力も強いので注意してください。」

にこやかに言う小竜姫様、なんだかんだ言って怖い人なのかもしれない。
剛練武の力任せの攻撃をかわしながらこっちを見て不適に笑う美神さん。

「なんてことないわっ!!要は、甲羅のないところをつけばいいのよ!!!」

美神さんはかわしざまに容赦なく剛練武の目玉を貫く。
そのまま煙となってしまった。
流石にあんなんされたら俺でも死ぬかもしれん。

「「「やった!」」」

俺とおキヌちゃんと飛鳥がハモッてしまう。
あれ?いつのまにか影法師が甲冑を身につけてる。

「まずひとつ・・・・!」

「なかなかやりますね♪これで、あなたには霊的攻撃に対して今までとは比較にならない防御力がつきました。」

「さっさと次にいって頂戴!」

ホホホ、と高笑いしながら美神さんが調子づいている。

「では次の試合、禍刀羅守!出ませい!!」

時代がかっているというか、古臭いというか・・・。
その呼び出し方はないだろうに・・・・。
出てきたのは四本の刀身でできた手足を持ち、関節の付け根に刃を持つ四足歩行のキモいやつだ。 蟻のような、骨のような、そんな感じ。

「悪趣味ねぇ〜・・・。」
「痛そうなデザインっすね。・・・俺が相手するんじゃなくて良かった・・・。」
「・・・うわぁ・・・。」
「そ、そんな風に生まれちゃったのは別に本人のせいじゃないじゃん・・。」

一番良識ある反応をしているのが魔族っていうのがなんともいいがたいところだが・・・。
その禍刀羅守は、周りの岩を真っ二つにして小馬鹿にしたように笑う。

「ほんと、悪趣味。ほとんど馬鹿ね。」

突如襲ってくる強烈な感覚。やばい、アレは美神さんの影法師を斬る。――間違いなく。

「美神さん、避けて!!」

「何を―――!?危ないっ!」

一瞬の差でかわすことができた。

「助かったわ、横島クン!!」

「禍刀羅守、まだ試合は始まってませんよ!!美神さん、はじめちゃってかまいません!」

自分でも解らない。なぜだか、相手の行動が解った。
いや・・・・・、あれは・・・・。

「すごいですよ、横島さん!」
「やるじゃん、横島!」

おキヌちゃんが俺の肩をゆすり、反対側から飛鳥が肩を組んでくる。
ささった腕が今だに抜けていない禍刀羅守の後ろで仁王だちする美神さんの影法師。

「この!!」

あっさりと矛に貫かれて消えていく禍刀羅守。
美神さんの矛がより大きく、鋭く変形した。

「やはり、あなた方には才能があるようですね。」

「「あなた・・・・がた?」」

美神さんと俺が同時に首をかしげる。

「ええ、普通の人間にしては横島さんも素質があると思いますよ?」

「そんなわけありませんって、こいつ只の丁稚みたいなもんですから。」

小竜姫様が、そ、そんな事を言うなんて・・・。

「俺に惚れたんッスねっ!!!」

小竜姫様に抱き突いて背中に手を回す。

「横島クン!?何を!」
「あ、そこに触ると・・・・・!?」

一瞬後に、小竜姫様の姿が竜へと変わる。

「!横島、あんたが触ったのは竜神の逆鱗ってやつじゃん!このままだと、私らの命がまずい!!」

俺を抱きかかえ、美神さんを空いた左手でぶら下げながら、ハーピー形態の飛鳥が言う。

「よく逆鱗に触れるとかっていいますけど、あれって・・・。」

「く、くだらないこと言ってるんじゃないわよ!」

つまり大ピンチって事か。でも・・・。

「暖かいな〜!柔らかいな〜!」

ああっ、飛鳥!その胸でいつまでも俺を慰めてくれ!!

「ちょっ、横島!今はそんな事・・・。」

「この馬鹿!!」
「横島さん・・・不潔。」

もちろん美神さんの突っ込みで撃沈。
そんな事をしている間にも俺達は門まで追い詰められてきた。
門を抜けて、外に出る。

「早く閉めて!!」

「何を言うておるのだ、中が騒がしいが、いったい何が!?」

門についた鬼の顔が大声で訊ねてくる。

「中はもう全壊よ!この馬鹿が小竜姫様の逆鱗に触れちゃって・・・!!」

美神さんは、俺の方を親指で指してそう告げた。

「なにぃ!?」

鬼門達の顔は焦り、体の方はじたばたと慌てている。

「小竜姫様が逆鱗に触れられ、竜の状態となるとあたり一面を破壊し尽くすまでとまらんのだぞ!!逃げる事はとてもじゃないが不可能だ!!!」

ちょっと待ってくれ。俺はそんな大変な事をしてしまったのか。

「ここは結界になっているから出るためにはここを通るしかないのだが・・・。とにかく、我ら小竜姫様には敵わんからあっさりあけるぞ!?」
「お前らでなんとかしてくれ!!」

「無茶いってくれるじゃん・・・!」

飛鳥の言葉が全員の気持ちを代表している。

「来た、開けるぞ!」

「しかたない、やるわよ!飛鳥、横島クン!!」

「解ったじゃん!」
「解りました!」

俺がテレキネシスで動きを鈍らせ、飛鳥がフェザーブリットによる援護射撃、そして美神さんが近接攻撃。
そのはずだったのだが・・・。

「うわ、全然にぶらないっ!?」
「神通根が全く通用しない!・・・さっきの闘いで霊力が減少してるんだわ!」
「フェザーブリットも大して効いてないじゃん!」

畜生、こうなったら・・・。

「そういうワケで、死ぬ前に一発!!」

「馬鹿かおまえは!!」

ゴスッ

やっぱり殴られた。くっ、ヤらずに死ねるかってーの!絶対生き残ってやるぞ!
俺に、何ができる!?
サイコキネシスでダメージをあたえるか?

「はぁッ!」

不可視の力の塊を直接ぶつける。
だが、竜は全く変わらずに暴れ続けている。

「・・・・効いてないな・・・。」

まぁ、そんなもんだろーなぁ。
なんてったって、俺だし?

「あぁッッ!!」

「美神さん!?」

美神さんが竜の尻尾に弾き飛ばされ、ぐったりとしてしまった。
これは・・・マジでさすがにまずい!

「横島さん、前!!」
「危ないじゃん!!!」

美神さんの方を見ていて気がついていない俺を突き飛ばして飛鳥が竜の鉤爪を受けた。
飛鳥の背中から噴き出す鮮血が傷の深さを物語っている。
俺を護って、こんなになったっていうのか。

「畜生!!」

右手を強く握り締めた。何も出来ないのはいくら俺だって悔しい。
強く手を握った痛みに、感覚が集中する。
護れないのか?また!!
また・・・?・・・またって何だ?
いや、そんなことよりも、右腕が焼き付くほど熱い。何かが集まって来て・・・・。
光るものが形を為していく。手をガントレットのように覆っていく。

「横島さん・・・・それは!?」

おキヌちゃんが俺の腕を指差した。
思った通りの形に姿を変える。

「病気・・・じゃないよな。」

「・・・横島クン・・・それからは霊気を感じるわ。もしかしたら・・・いけるかもしれないわ・・・。」

ぜいぜいと息をしながら、美神さんはそう呟く。
不謹慎だが、色っぽい。
倒れてるから太ももがよく見えるぜ、チクショー!

「――なっ!?」

とたん、出力を増す光。
スケベな事考えたから・・・か?

「あんた、おとりになりなさい!・・・私がアレの目を回してみせるわ!!」

「なっ!?」

「だって、あんたじゃアレに一撃かますなんてどう考えても無理そうだもの。・・・安心して!あんたが生きてるうちにケリつけてみせるわ。」

「あ〜〜、もう!やっちゃる!!」

俺の輝ける(?)未来ためにもやらなあかん!
美神さんも・・こんな美人が死んだらもったいないしな!
俺を護ってくれた飛鳥も心配だし!
皆で生き残るぞ、こんなアホな死に方できるかっつーの・・・・・・・!!
その決意とともに、さらに輝きは収束していく。
竜の口から倒れてる飛鳥とそれを介抱しているおキヌちゃんに向かって霊波光線が放たれる。

「ぐぉおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお・・・・・」

光を一点に集中して盾を形作る。角度をつけて上に逸らしてるはずなのにすごい圧力だ。
無理は承知でも俺が必死でやらんと二人とも消滅しちまう・・・!!

「すごいです、横島さん!!!」

褒めるのはいいから、そこからどいてくれ、おキヌちゃん・・・!堪えているのだって奇跡に近いんだ。
美神さんが後ろの切り立った部分に鬼門に協力してもらって登るのを見つつ、それだけを希望に力を振り絞る。

「おキヌちゃん!!・・・飛鳥をつれてそこから遠くに逃げてくれっ!早く!!!」

「え、あ・・は、はいっ!!!」

うんしょ、うんしょ、という声が聞こえそうな動きで飛鳥を運びながらおキヌちゃんがその場から逃げてくれた。
ぬああっ、もう受け流してんのも限界じゃ〜〜〜!!!!!!
それでも力を振り絞って俺もその位置から真横に動く。
嘘だろ・・・後ろに見えていた山が砕けたぞ・・・。
冗談じゃね〜〜っ、あんなんとやってられっかよ!!
龍は方向転換してこっちに向かって口を大きく開けて飛んでくる。
かかかか、齧る気かっ!?嫌やーーーーーーーーーッ!
しかし、軽く避けられるような遅さじゃないッ!?

「み、美神さん、はやくっ!俺死んじゃうかも・・・・。」

かろうじて身をかわし、修行場のほうに一目散に走る。

「うあちッ!?」

竜の口腔から放たれる霊波砲を横っ飛びに避ける。
振り返った瞬間に撃ってくれて助かったが、あんなんいつまでも避けてられるかっ!
し、死んだら可愛いシスターがいっぱいの教会で俺を葬ってくれ!!
キリスト教徒じゃないけど、辛気臭い坊さんに囲まれるのは嫌じゃ〜!
む、視界の隅に美神さんが映った気がする。

「待たせたわねッ!このGS美神令子が――・・・」

おおっ、この頼もしい台詞はっ!?
後ろを振り向くと、龍の頭の上で霊気の出力が感じられるような神通棍を振りかぶってる美神さんの姿がっ!

「極楽にいかせてあげるわっ!!!!」

龍の眉間に神通棍を突き立てる美神さん、美人は何やっても様になるなぁ。
・・・男の美形やったらそれが許せんが。
って、待ってくれ、神通棍から放たれる霊力の奔流が俺までも飲み込んでしまう。

「結局こうなるんかぁああああああああああああああああああああああああああああ!?」

霊波の衝撃で俺はがけっぷちまでぶっ飛ばされる。
ああ、もう、こんなんばっかし。
なんか美神さんの叫び声とか、おキヌちゃんの絶叫とか、鈍い音が連続して聞こえてきたりしている。
向こうは向こうでドラマがあるみたいだけど、美神さんがいるからきっと大丈夫に違いない。
というか、俺も俺で一大スペクタクルの最中だ。
命綱なしでのフリークライミングをすることになるとは思いもしなかった。
崖っぷち人生だチクショー。
光の奔流が収まった頃、やっと龍が倒れた。徐々に姿がもとに戻っていく。
その様子を崖から這い上がりながら確認する俺。
そうだ、飛鳥が・・・!!

「見ていたぞ、小僧。おまえもなかなかやるではないか。」
「見なおしたぞ。どうじゃ、鬼門にならんか?」

なりたくないです・・・。っつーか、なれるものなんかい。
えらくげっそりした鬼門の二人が飛鳥を介抱している。

「飛鳥、大丈夫か!?」

包帯を巻かれた飛鳥がおきあがって口を開いた。

「横島・・・かっこよかったじゃん・・・。」

龍の横でへたり込んでいた美神さんも立ちあがってよろよろとこっちに歩いてくる。

「あんたも時々やるわねぇ。まさか、超能力どころか霊能力まであるとはね。」

「なはははは!実力ッすよ実力!」

ゴチン、と美神さんにドツかれる。
どぼぢで?

「もとはと言えば、アンタが全ての原因でしょーが!!!」

仰る通りなので土下座をして謝っておく。

「で、鬼門はなんでそんなにげっそりしてんだ?」

「それはな・・・お前、さっきの神通棍見ただろう?」

「あれはな、我等の霊力がふんだんに含まれてたんだ。」

言葉も態度もいつもどおりなのだが、どこか力がない二人・・・二体か・・・?

「・・・。」

美神さんのほうを見ていると、何かを考え込んでる。
崩壊した妙神山修行場をじっと見つめてから、ニヤリと笑う美神さん。
またこの人はなんか悪巧みを・・・。

「・・・・はっ!?私は一体・・・。」

おきあがった小竜姫様があっちこっちをきょろきょろと見て驚いたように口を抑えた。

「誰がこんな酷いこと・・・。」

「あんたよ、あんた。」

美神さんが飽きれたように突っ込む。
美神さんが全力でやったのにぴんぴんしてる。さすが神様・・・。

「こ、こんな不祥事が天界に知れたらっ・・・私どうしよう・・・!」

おろおろとしてる姿はあまり神様らしくない。
う、美神さんがにっこりと笑ってる。

「大丈夫よ、こっそり直せばバレないわ。」

子悪魔的な微笑を浮かべる美神さんだが、子悪魔なんてかわいらしいもんじゃないな・・・。

「でも私建物作る能力なんてないんですもの!直すって言ったってどうやって・・・!」

涙目になる神様って珍しいものを見てるんだろうか。

「私がお金出してあげる、50億もあれば1週間で直るって!」

「ありがとう!感謝します!」

感極まったのか、小竜姫様は美神さんに抱きついた。

「いいのよ、感謝なんて!それより最後の能力頂戴ね!!」

小竜姫様を撫でながら美神さんは言った。
なるほど、さっきの考え事はそれが目的か。
なんてあこぎな人なんだ・・・・。

「霊能力の総合的な出力を上げました。あらゆる点でこれ以上の能力を持つ人間はごくわずかです。」

だまされてますよ・・・小竜姫様。









「――とにかく、無事で戻ってなによりだが・・・・。それではほとんど金で能力かってきたようなものじゃないか・・。ひどいことするなぁ。」

一部始終を聞いた唐巣は飽きれかえったようにため息をついた。

「あら、それは違いますわ。お金さえあれば誰でも買える訳じゃありませんもの。でもま、地獄の沙汰も金次第っていうし、神様だって、ね♪」

美神は振り返りながらそう言って、ウインクして見せる。

「ところで・・・横島君と飛鳥君が見当たらないようだが?」

「あ、横島さん達でしたら・・・。」

「向こうで土木作業してるわ。今月の生活が苦しいらしくて。」

そこまでいっておキヌと美神は笑いあった。

「もう少し時給上げて雇いなおしてあげたらどうなんだい?うちではそんな高い自給は出して上げられないからね。」

横島を不憫に思った唐巣は苦笑しつつ、そう提案してみる。

「まぁ、確かに超能力に霊能力。多少使い勝手はよくなったけど・・・・・。」

うーん、と美神は唸って続ける。

「ま、もう少ししたら・・・ね。」



















今ごろ美神さんは街に戻った頃だろうか。

「あら?あなた達は帰らないんですか?」

土木作業をしている俺と飛鳥に小竜姫様が声をかけてきた。

「・・・・生活苦しいんで、しばらくここでバイトして行きます。」

「唐巣のおっさんに厄介になってる身だし、家賃がわりに金を少しでも払うのは当たり前じゃん。それに・・・・。」

ちら、とこちらを見て黙り込む。
黙り込んだのはよくわからないが、なんて偉いんだ!

「ふぅん・・・。そういえば、横島さんの霊能力があの騒ぎで目覚めたらしいですね?」

そろそろ休憩時間だし、座って話そう。

「ええ、まぁ・・・。」

「どんなものなんですか?」

右手に意識を集中する。――すると、霊気の輝きが右手に集まり、形を為す。

「へぇ・・・・・霊気の篭手ですか・・・。」

「ある程度自由に形が変わるみたいッスけど・・・。」

剣の形、金槌の形、でかい手の形に変形させてみる。

「へぇ・・・・!」

顔の前で両手を合わせて、感心したように声を漏らす小竜姫様。

「・・・もうすぐGS認定試験ですし・・・それまでここで修行して、GSめざしてみませんか?美神さんほどとはいかないまでも結構良いセン行くと思いますよ。」

「いいじゃん、横島!やってみたら?」

「え、でも・・・唐巣神父に許可とらないと・・・それにバイトもしないと・・・・・。」

提案する小竜姫様とその提案が気に入ったらしい飛鳥に、そう言い訳してみる俺。
死ぬのは嫌なのでいまいち踏ん切りがつかない。

「唐巣さんにはこちらで連絡を入れておきますよ。」

「バイトは私に任せて修行するじゃん。」

だが二人の言葉の前に、俺のささやかな抵抗も脆くも崩れ去ってしまう。

「い、嫌じゃあああ!!!死にたくな〜い!」

そうだ、俺はあんな修行したら死んでまう!!!

「大丈夫ですよ、いくらなんでもいきなりあんなきついコースはやらせませんから。」

そ、それなら・・・まぁ・・・いいのか!?
いや・・・まてまて。
うまくゴーストスイーパーになれれば、人生は薔薇色だ!
金は入るし、モテるし!
それに美神さんをうまく助けていけばいつかは!!



「このままじゃダメだわ・・・・・。」

妖怪に囲まれて絶望する美神さん。

「おっと、一人の女にこんな大勢がかりとは・・・・。卑怯なんじゃないか?」

そこに登場する謎の男!

「誰だ貴様!!!」

「俺の名前は横島忠夫!地獄に行っても覚えとけ!」

カッコ良いぞ謎の男!っていうか俺!!!
貧弱なボウヤだった俺が栄光を掴むきっかけを作った(予定)この右手はまさに【栄光の手(ハンズオブグローリー)】!!


そして、今度は護れるはずだ。


俄然やる気が湧いてきた。
そうだ、俺は強くならなくちゃいけなかったはずだ。

「やります!!ボク、やっちゃいます!!!」

手を上げて宣言する俺を見て小竜姫様はにっこりと笑った。
そして、あれ?え?・・・俺の額のバンダナに小竜姫様が口づけをした。

「な!?一体何を・・・!?」

飛鳥が驚いたような怒ったような顔で小竜姫様を見ている。

「横島さんのバンダナに竜気を授けました。あなたに力を貸してくれる事でしょう。」

前半は二人に、後半は俺に小竜姫様は説明した。

『私はその名を【心眼】と言う。小竜姫の命によりそなたを護り、敵に打ち勝つ力を与えよう。』

自分の額あたり、というか、ぶっちゃけバンダナから声が聞こえる。

「この心眼があなたのパートナーであり、あなたのもう一人の師となります。」

「もう一人の?」

「もちろん私もあなたの師としてあなたを鍛えます。」

「おっと、時間だ。小竜姫、ヨコシマを頼む。ヨコシマ、働くのはあたしに任せるじゃん。」

飛鳥は軽く微笑んでから歩き去っていった。

「・・・ハーピー、いえ飛鳥さんとはどういう経緯で?」

話したものかどうか悩んだけど、結局大体のあらましを話した。
別に隠すような事じゃないと思うからだ。

「そう、そんなことが・・。」

「・・・ええ。」

さてと、と小竜姫様が立ちあがった。

「早速修行開始です。」

続く
SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO